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「大事な核は中で泥に包まれていて、簡単には傷つかない構造になってんだよ。衝撃で足が折れたりするが、核に問題がなければ数秒で元にもどる」
「それ滅茶苦茶痛そうじゃん! 部位が切断されちゃうのは嫌だな」
精霊の痛ましい姿を想像すると、どうしても暗い顔になってしまう。
「大袈裟だな。足が欠損した感覚はあっても人間みたくに痛みは感じないよ。こんなん小学生だって知ってるだろ」
精霊は痛覚を持たない。もちろん知っているけど。
足の感覚が一時的にとはいえ失くなるのは、それだけで十分に苦痛ではないのか。身の竦む妄想が広がった。
「悪い、言い方が悪かった。髪を切ったり爪を切ったり、そんな感じに近いと思うぞ」
賢治はばつが悪そうに坊主頭を掻いた。
「うん。でも大切に扱ってあげてよね。アースちゃんは大切な賢治の家族なんだから。にはは!」
些細な会話で空気を暗くしたくなくて、ちょっと無理して笑う。なんとなく首元に寂しさを覚える。
「気をつけるよ。…………平気か?」
「もちろんだよ。もう昔のことだし」
私はアースちゃんの核のある部分をナデナデしてから、賢治の肩に戻してあげた。
「どうして賢治が暗い顔するのよ」
私が柄にもなく一瞬とは言え、暗澹たる気持ちに浸ってしまったが故に、賢治にあの日の出来事を思い出させてしまったみたいだ。
ほんの一瞬ですら見逃さない、賢治のアンテナは敏感だ。
「折角の土曜日だよ? 楽しまないと勿体無いよ!」
「だな。お前の言うとおりだ」
「若人は、こういう時間こそ大切に使わなきゃ。にはは」
「大切に、か……。若人のお前が言うと、説得力増し増しだな」
「賢治もそう思う? 私も言ってて良い事言ってるな~って気がしてたんだよね」
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