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「だねー。嫌になっちゃうよねー」
「今年くらいは勘弁してほしいな」
この切なる祈りを何処に捧げればいいのか、私は知らない。
少なくとも、水精もしくは雷精宛てでは意味がないってことは分かる。
しかも降るときは決まってゲリラ豪雨。
そりゃ鎮雷祭の悪口を言いたくもなるよ。
「ふふ。スミちゃんってば、元も子もないようなことを言ってるー。そういうお祭りだよー? ただでさえ山に囲まれている地形だから尚さら、この時期はやっぱり仕方ないよー」
「雨は降らずに雷だけ降るんだったら、まだ許せるんだけどね」
「なにそれ怖い!」
妙ちゃんは何を想像したのか、頭を手で覆ってぶるぶると震えた。同性の私から見てもキュートすぎる仕草だ。
スーも妙ちゃんを真似て頭を抱えてぶるぶると震えた。――腰振りダンスみたいになってる。なにこれ癒し。
ぴと。
雫が私の鼻先に触れた。
スーの腰振りダンスを疑ったけど違った。
「雨?」
呆気に取られていた私に、妙ちゃんがすこし離れた位置から振り返って手招きをしている。
「なにしてるのスミちゃん! 早く避難するよー」
盛大な音を引き連れて、大量の雨粒が天から降り注ぐ。
キャーーー、という黄色い合唱に押されるように、人が出店に向かって潰れていく。
各出店のスタッフは待ってましたとばかりに屋根に棒を引っ掛けて、軒先を伸ばしていく。
そして、一息つく間もなく「安いよ安いよー!」という誘い文句が、雨音を押しのけて色んな出店からあがるのだ。
出店の屋根を雨宿りに利用した客は、若干の気まずさのためか、場所代感覚で店の商品を買ってしまう。
鎮雷祭はとっても出店に優しいお祭りなのだ。
妙ちゃんに手を引かれながら、出店の軒下に滑り込み、セーフ! ついでに私たちは小学生だから商品を買わなくてもセーフ! まあ、買うのは強制じゃないし、いいよね?
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