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「通り雨でありますように!」
「大丈夫だよスミちゃん。きっと数分でやむよー」
私たちの願いをかき消すように、特大の包み紙を破くような雷鳴がとどろき、辺り一面を閃光が駆け抜けた。
かしこから「わー!!」と「キャー!!」の悲鳴が瞬時に入り乱れる。
ズドオォォン!
耳をつんざくような雷撃音が鳴り響いた。
雷が落ちた、光と音がほぼ同時だった。
「ぬわっ!? っとっと?」
落雷に驚いた客足に体を押されて、私はあと退る。
一度失われたバランスは、後ろに居た誰かにぶつかったことで補われた。
私の頭が反射的に下がる。
「ごめんなさい」
「俺の方こそよそ見してた。ごめん。大丈夫だったか?」
面を上げると、甚兵衛を着た少年が心配そうに私を見つめていた。
普段まったく人の容姿を気にしない私でも、少年を見た時は鼓動が一際強く打った。
なんだこのキュートな垂れ目は! スポーツヘアーも抜群に決まっている。
格好いい……。だから好き! とはならないけど、女子たちがイケメン芸能人の話題でワイワイ騒ぐ心理がすこし分かった気がする。
「え、うそ!? 賢治くんじゃん! こんなところで会うなんて思わなかったよー。いやだー、久しぶりー。甚兵衛もすごく良く似合ってるー!」
妙ちゃんが心なしか私と話す時よりもワントーン、いやツートーン明るい声色で、嬉しそうに前に出た。
彼女のこれはいつものことだ。
惚けて固まっていた私をフォローしてくれた――ってことはたぶんない。
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