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【2】
終了のチャイムが鳴って、今週の授業からようやく解き放たれる。
椅子に座ったまま大きく上に伸びをして、休日をどう過ごそうかと思案に暮れる。
家でごろごろまったりして過ごすのも良いし、友達を誘ってパーっと遊びに出かけるのも魅力的だ。
「賢治は休日をどう過ごすの?」
参考までにと、後席に座る友人に訊ねてみた。
「それより先ずは、礼の一言を聞きたいのだが」
賢治は胡乱げな眼差しで私を見返しつつ、世界史の教科書とノートをバッグに仕舞っていく。
中肉中背の好青年といった風貌で、尻がすこし垂れ下がった目が可愛くも格好良くもある。
さっきの授業では正直かなり助けられた。
内心では二礼二拍一礼して奉ってあげたいほどだけど、賢治相手にそこまで大袈裟な態度をとるのは違う気がする。
「ほんと助かったよ。その節はありがとうございました。それで、予定くらい聞かせてよ」
「調子の良いやつだな」
あまりにさらっと礼を述べたのが不服だったのか、そうでないのか、賢治は一瞬呆れた顔を見せたけど、すぐにいつもの優しい顔付きになった。
シャープな顎、少し受け口の愛くるしい唇、筋の通った鼻、長いまつげ。唯一、坊主頭でかなりの損をしている。
中二の頃までイケメンヘアーだったのに、好きでもない女子にモテるのがしんどくなったからという理由で、中三の春に逆張りデビューを果たした変わり者だ。
ときたま感じていた女生徒のトゲのある視線が減ったのは、賢治の友人として嬉しい恩恵ではあったけど。
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