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「私の長所を褒めてくれてありがとう。褒めると伸びる私の性格を良く分かってらっしゃる。にはは」
「褒めてないし、伸びすぎた暁にはどっかでバッサリ切る必要があるな」
「私の長所がまるで雑草みたいな扱いだ……」
「そうならないよう程々にな」
「忠告は嬉しいけど、勝手に育っちゃうんだよねー」
なんだか本当に雑草みたいだな、私の長所。
「いつかお前が、それで痛い目を見なきゃいいが」
……本気で懸念されている。
そこまで気を使わなくてもいいのに、と思う反面で、友人として結構嬉しかったりする。にはは。
「そうだ、お前に話したいと思っていたから丁度いいや。お前さ、ここの近くの山の廃工場に多くの光精が住み着いているって噂、聞いたことあるか? なんでも人がまったく寄り付かなくなった捨て山らしいんだけど」
賢治は食い入るように聞いてきた。
私は考える間を繋ぐように、窓の外の景色を遠目に眺める。
背の高い教会の先、青く澄んだ空と緑豊かな連なった山々が、陸と空の境界線をせめぎ合っている。とても良い天気だ。五月らしい陽気な匂いがここまで漂ってくる。
「山の廃工場、ねぇ。いやー、初耳かな。捨て山って、ここ山いっぱいあるし。そんなとこに本当に光精がいるの?」
「らしいぞ」
光精は自然界に多くて、なおかつ絶対数が少ないとされている。
割りと田舎のこの町では、山から野生の精霊が下りてくることが多いけど、それでも光精は年に五、六匹目撃する程度だ。
狭いところにも広いところにも現れる。
ピンボールほどの丸い光膜から、白昼色の淡くて温かみを感じさせる光を放つのが特徴だ。
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