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いつかの話の流れで、何度か写真や動画を見せてもらったことがある。
精霊の命である核を守るように、土くれを纏う。本体部から円柱状の二本の突起を生やし、足のように巧みに交互に動かして移動する。
目も耳も口も鼻もない。
でも喋れば伝わるし、反響する細かな振動から周囲の物の位置を正確に読取ることができる。
手のひらに収まる可愛いやつだ。
「ほんと!? とうとうアースちゃんに会えるのかー、楽しみー。アースちゃんがいれば探検も安心だね」
「ちゃん付するのはお前くらいだよ。あと、アースが居なくてもお前のことは俺が守るし。……誘った側の責任ってのがあるからな」
賢治は照れたように口を尖らせている。どことなくセリフも早口だ。
遊びに出かけた帰り道は毎回家の側まで送ってくれる、その時の頼もしさが今はない。
賢治の抱えている悩みは、思った以上に深刻なのかもしれない。そんな状態でも私を心配する優しさは流石だと思う。
「にはは。ありがとう賢治。でも、そんな気を使ってくれなくても私なら付き合うよ」
「つ、付き合うってお前! ……一緒に廃工場に行ってくれる、って、意味だよな?」
「うん? それ以外の意味なんてなくない?」
「…………ないよな。悪い忘れてくれ」
賢治は大きなため息を吐いた。
今回の一件で、少しでも賢治の悩みが解消されるといいな。
そうなるように、気を引き締めて頑張ろう。
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