2.クラゲ王子と呼ばないで side海月

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 晴れて合格した私は、お小遣いで加住水族館の年間パスポートを買った。クラゲの絵が入ったパスポートは、定期券と一緒に私の通学用リュックにぶらさがっている。  高校に入ってからは、平日は毎日加住水族館に通っている。  加住水族館には、クラゲに関するたくさんの資料があるから、本や図鑑を見たり、DVDを見たりして過ごすのも楽しくて。  通ううちに仲良くなった副館長は、私の姿を見つけると、クラゲについての色んな話をしてくれるようになった。  知識が増えれば増えるほど、クラゲという不思議な生き物のことをもっと知りたくなっていく。  今は副館長のようにクラゲの研究者になるのが私の夢。  だから、私にとって加住水族館はただの水族館じゃない。特別な場所。  土日には怜音くんが水族館によく手伝いに来ていて、話しかけてくれた。  そんなわけで私は、クラゲ愛と共に怜音くんへの恋心も募らせていったんだけど、一年前急に怜音くんはパリに発ってしまった。  それは本当に突然だった。
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