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「もし綺麗なクラゲの写真を見たら、珠理も加住水族館に行きたくなる?」
「ならない。だって私の家、逆方向だしさ。クラゲに興味なんて微塵もないし」
もう、微塵もないとか言わなくてもいいのに。
加住水族館はどの駅からも離れた場所にあって、公共交通機関はバスしかないんだよね。きっとそれもお客さんが減っているのに関係しているんだと思う。
「バスの本数少ないしね。前はもっと水族館前に停まるバスがあったのに。だから、うちの高校の子たちも行かないのかな」
「そもそも海月がクラゲオタクじゃなかったら、私水族館の存在も知らなかったし、みんなそうなんじゃない?」
「え、そうなの?」
なんだかショックだ。そんなに加住水族館が知られていないなんて。
「クラゲ以外になんかインスタ映えするとこないの?」
「加住水族館は建物自体が本当に古いから」
「じゃ、建物はダメだ。イルカは?」
「いない」
「いないか。じゃあペンギンは?」
「いない」
「ほらあの海獣みたいのとか」
珠理はセイウチをイメージしたのか、手で口の前に長い牙を作りながら言う。
「……いない」
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