2.クラゲ王子と呼ばないで side海月

12/18
前へ
/479ページ
次へ
「もし綺麗なクラゲの写真を見たら、珠理も加住水族館に行きたくなる?」 「ならない。だって私の家、逆方向だしさ。クラゲに興味なんて微塵もないし」  もう、微塵もないとか言わなくてもいいのに。  加住水族館はどの駅からも離れた場所にあって、公共交通機関はバスしかないんだよね。きっとそれもお客さんが減っているのに関係しているんだと思う。 「バスの本数少ないしね。前はもっと水族館前に停まるバスがあったのに。だから、うちの高校の子たちも行かないのかな」 「そもそも海月がクラゲオタクじゃなかったら、私水族館の存在も知らなかったし、みんなそうなんじゃない?」 「え、そうなの?」  なんだかショックだ。そんなに加住水族館が知られていないなんて。 「クラゲ以外になんかインスタ映えするとこないの?」 「加住水族館は建物自体が本当に古いから」 「じゃ、建物はダメだ。イルカは?」 「いない」 「いないか。じゃあペンギンは?」 「いない」 「ほらあの海獣みたいのとか」  珠理はセイウチをイメージしたのか、手で口の前に長い牙を作りながら言う。 「……いない」
/479ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加