96人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうですよね。来るわけがないですね」
「同意しないでくれ! おじさんは心が深く傷ついたよ」
顔を覆って泣くふりをする副館長には呆れてしまうけど、事実副館長は傷ついているんだから仕方がない。
「副館長が言ったんじゃないですか。でもステラさんは、副館長のことが嫌いで別れたんじゃないんですよね?」
「そんなことを言いながら、ステラにはもう新しい恋人がいるそうだよ。怜音が言っていたからね。それに彼女が私に不満を持っていたのは間違いのないことだから。クラゲばかり追いかけていて、あなたは家族とクラゲとどっちが大切なのっていつも怒っていたし。そんなのステラや怜音に決まっているけど、クラゲは手のかかる死んでしまう生き物だし、ここ数年は色々水族館も大変だったから」
本気で泣きだすんじゃないかという顔をして副館長は言った。
「あ、私そろそろ怜音くんのところに行かないといけないので」
愛想笑いをしながら通り過ぎようとした私を、副館長はじと目で見てくる。
「冷たいねえ。もう私の話なんて聞きたくないと言わんばかりじゃないか」
「そういうわけじゃ。怜音くんと約束をしているんです」
最初のコメントを投稿しよう!