1.近くて遠い街 side怜音

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 ロータリーにあったタクシーやバスの乗り場は、どこかへ移動してしまったらしい。ロータリー自体も、噴水広場という名前に変わり、中央にある大掛かりな装置がリズミカルに水を噴き上げている。  案内板を見ると、どうやらバスやタクシーはショッピングモールのすぐ裏手にある、ターミナルに集められているようだった。  ここに来たら懐かしい気持ちになるだろうと思っていたのに、まるで観光客みたいだ。バスの乗り方すらわからないんだから。  大きなスーツケースを転がしながら、レンガが敷きつめられた歩道を歩きだしてすぐに、スマホの着信音が鳴った。  立ち止まり、ポケットから取り出して見る。スマホの画面には加住大洋(かすみたいよう)と表示されていた。 「もしもし」  久しぶりに親父と話すと思ったら、緊張して声が掠れてしまった。 『ああ、怜音(れおん)。久しぶりだね。元気だったかい』  向こうも緊張しているのか、半年ぶりの親父の声も、いつもと違って聞こえた。 「うん。どうした?」 『そろそろ岡見台駅に着く頃かと思って。今どこにいるのかね』
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