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ロータリーにあったタクシーやバスの乗り場は、どこかへ移動してしまったらしい。ロータリー自体も、噴水広場という名前に変わり、中央にある大掛かりな装置がリズミカルに水を噴き上げている。
案内板を見ると、どうやらバスやタクシーはショッピングモールのすぐ裏手にある、ターミナルに集められているようだった。
ここに来たら懐かしい気持ちになるだろうと思っていたのに、まるで観光客みたいだ。バスの乗り方すらわからないんだから。
大きなスーツケースを転がしながら、レンガが敷きつめられた歩道を歩きだしてすぐに、スマホの着信音が鳴った。
立ち止まり、ポケットから取り出して見る。スマホの画面には加住大洋と表示されていた。
「もしもし」
久しぶりに親父と話すと思ったら、緊張して声が掠れてしまった。
『ああ、怜音。久しぶりだね。元気だったかい』
向こうも緊張しているのか、半年ぶりの親父の声も、いつもと違って聞こえた。
「うん。どうした?」
『そろそろ岡見台駅に着く頃かと思って。今どこにいるのかね』
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