3. バックヤードで会う時は side怜音

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「もう! そんなことないの分かっていますから、からかわないでください」  僕が横から覗き込みながら近づくと、彼女は拗ねた顔をして離れてしまった。 「あーあ、逃げられちゃった」  少しは意識してくれたらいいのにな。 「ね、今日も僕、香水の匂いする?」 「はい、します」 「香りってね、過去の記憶を甦らせるんだって」  顔を上げた彼女は、不思議そうに首を傾げた。 「プルースト効果って言うらしいんだけど。くらげちゃんもこれからこの香水の匂いを嗅ぐと、僕のことを思い出すのかな」 「香水の香りで怜音くんを?」 「そう。これが僕の匂いだと、もうくらげちゃんの脳にインプットされていたらだけどね」  くらげちゃんは、匂いを確認するように鼻を動かしている。  忘れないでいて、なんて言える立場じゃないけど、僕は願わずにはいられない。 「今日はそのままバックヤードに直行でいい?」 「いいです」  くらげちゃんの返事を聞いてから、僕は従業員以外立ち入り禁止と書かれた、大きなステンレス製の扉を開けた。
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