3. バックヤードで会う時は side怜音

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 ここのポリプは大体、ガラス容器の底にくっついているけど。 「あ、じゃあ待っている間に片岡さんからのクイズです。タコクラゲの本来の色は何色でしょーか」  顕微鏡を覗いたまま、片岡さんはくらげちゃんに話しかける。  幼い頃からここに通い詰めているくらげちゃんは、飼育員のみんなとも顔なじみで可愛がられている。  なんでも吸収しようとするから、飼育員たちだけでなく、副館長である親父もくらげちゃんのことが可愛くて仕方がないといった様子だ。 「えっと、茶色っぽい色だったと思います」 「じゃあ、そこのタコクラゲの水槽を見て」  真後ろにある棚に並ぶ水槽から、くらげちゃんはタコクラゲを探している。 「あれ、これですよね? でも青いです。ライトの色じゃ……ないですもんね」  水槽の中のクラゲを真剣な表情で覗き込んでから、彼女は片岡さんを振り返った。 「タコクラゲと共生している植物プランクトンの存在は知っている?」 「褐虫藻だと思います。サンゴ礁やサカサクラゲなんかにも寄生している藻類ですよね」
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