3. バックヤードで会う時は side怜音

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「はい。でも、僕は研究者には向いていなさそうなので」 「研究だけが道じゃないと思うけどねえ」  別の道があるという意味なんだろうか。飼育員になるという意味なのかな。それも簡単な道じゃないと思うけど。 「ありがとうございました」  満足したのか、くらげちゃんはにこにこしながら僕らのほうへ歩いてきた。  この笑顔だもんな。僕といるよりも、ずっと幸せそうだ。 「良かったね。くらげちゃん、めちゃくちゃ嬉しそうだ」 「え、……そうですか。ポリプが見られたのが嬉しくて、今日眠れないかもって思っていたんです」  喜びが顔に出ていたことが恥ずかしくなったのか、くらげちゃんはペチペチと頬を手のひらで押さえている。 「そんなに喜んでくれると嬉しいなあ。クラゲガールみたいな子がいないと、これからの研究者が育っていかないからね。興味を持ち続けてくれる若い子たちがいるのはいいことだねえ」  片岡さんは頷きながら顕微鏡を覗き、またポリプに餌を与えだした。 「ドフラインクラゲをポリプから育てるのは難しいんだよねえ。小さくてねえ。なかなか餌を上手く食べてくれなくて、手間がかかるんだよ」
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