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「駅に着いたところだよ。バスで行くからいいよ。どうせ親父は水族館が忙しいだろうし」
嫌味っぽくなっちゃったな。普通に話そうと思っていたのに。いつもこうだ。親父と話そうと思うと、上手く思ったことが伝えられない。
『すまなかったね。空港まで迎えに行けたら良かったんだが』
「あ、ごめん。嫌味じゃないよ。本当に大丈夫。あとはもうバスに乗るだけだから」
『そうか……。じゃあ水族館で待っているよ』
「荷物を家に置いたら行くよ。鍵っていつものところにある?」
『ああ、怜音とステラがパリに行く前と何も変わっていないよ。若干、物が溢れかえっている以外はね』
ステラに離婚を突き付けられ、ひとり家に残った親父は、この一年の間、どんな気持ちで暮らしていたんだろう。これでようやく研究や水族館の仕事に打ち込めると、せいせいしていたんだろうか。
『怜音、ステラは元気にやっているかね』
「少し前に電話していなかった?」
『あのときは、怜音がいつ頃来るかという話をしただけだからね』
「そうなんだ。ステラは元気だよ。相変わらず小言が多いけど」
『その、今ステラには仲のいい人とかいるのかい?』
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