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僕はそんな彼女の喜ぶ顔が見たくて、以前はよくバックヤードに連れてきていた。
片岡さんが顕微鏡に向かっている間も、別の飼育員さんたちがバタバタと出入りしている。閑散としている水族館だけど、裏側はいつも忙しそうだ。
いつか僕もここで働くんだろうなと、小さい頃は思っていたんだよな……。
だけど、くらげちゃんや親父を見ていたら、僕には無理なんじゃないかって思えてきて、だんだんクラゲに興味を持つことを辞めてしまった。
「おい怜音! 勝手に入るな!」
くらげちゃんの後ろ姿を見ながら考えごとをしていた僕は、背後から聞こえた怒声に飛びあがりそうになった。
うわ、しまった。蔦下さんだよな、この声。
振り向くとやっぱり蔦下さんが、不機嫌さを眉間に刻み込んで立っていた、
「す、すみません! 副館長には事前に話をしてあったんですが」
緊張で声が震えてしまう。
蔦下さんは、一年半ほど前から加住水族館の飼育長を務めている人だ。
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