3. バックヤードで会う時は side怜音

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 これをちゃんと着ろというように加住水族館という文字の刺繍が入った自分のポロシャツを摘まんで見せた。 「はい、すみませんでした!」  蔦下さんは、僕が返事をしても知らんぷりをして、片岡さんと何か話しだす。  本当にしまったな。くらげちゃんにも嫌な思いをさせちゃったし。  とりあえず蔦下さんがいなくなるまでは、静かにしておこう。 「あ、あの勝手に入ってごめんなさい。私やっぱり外にいます」  そう思った矢先、泣きそうな顔をしながら、くらげちゃんは蔦下さんに向かって頭を下げた。  それから、早足で出入口の扉に向かって歩きだしてしまった。 「え、くらげちゃん!」  声を掛けても振り返らず、彼女は扉を開けて出て行ってしまう。  バタンッと大きな音を立てて、扉が閉まった。  くらげちゃんのあとを追い、僕も急いで扉の外へ出ることにした。 「待ってよ、くらげちゃん。出て行かなくてもいいのに。ちゃんと副館長には許可をとったんだから」  くらげちゃんに駆け寄り腕を掴むと、彼女は足を止めた。 「ごめんなさい。私のせいで怜音くんが怒られてしまって」
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