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背を向けたままだけど、声からも落ち込んでいるのが伝わってくる。
「くらげちゃんのせいじゃないよ。僕がエフィラを見せるって言ったんだから。蔦下さんにも事前に許可をとれば良かった。ごめんね。嫌な思いをさせて。こっちを向いて」
「嫌な思いなんてしていないです。怜音くん、ありがとうございました」
振り向いた彼女はしょんぼりした顔のまま、無理に笑おうとする。
「元々部外者立ち入り禁止の場所なのに、入った私が悪いんです」
「悪くないよ。僕がきちんとした格好をしていたらよかったんだと思う。前は副館長がバックヤードツアーとかもやっていたのにな。蔦下さんは一般の人を入れることに反対みたいなんだ。そんなの、知っているよね。くらげちゃんはずっとここに通っているんだから」
以前の天下りで就任した館長の頃はまだ良かったんだ。何もしない代わりに副館長である親父に、全権を任せてくれていたみたいだから。
でも、元市議会の議員だった奴が館長になってから、効率化だのコスト管理だとかうるさく口を出すようになって、現場に来たこともろくに無いくせにコストカットだと言って事務スタッフの契約を打ち切った。
その後すぐ、古くからいた飼育員たちが一斉に辞めてしまったりして、加住水族館は大変なことになってしまった。
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