3. バックヤードで会う時は side怜音

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「人手が足りないのはわかるけど、僕は前みたいに、子どもたちに生き物を身近に感じてもらえることも大事だと思うんだけどな……」 「私も前の加住水族館の方が楽しかったと思います」  ぼやくように言った僕の言葉に返事をするように、くらげちゃんが小さな声で言った。 「だよね。せめて最後くらい、前みたいに戻ったらいいのにな。何か手伝えたらいいなと思っていたんだけど、蔦下さんは僕が入ることも快く思っていないみたいだから、何もできなさそうなんだ。副館長もさ、最近蔦下さんに飼育管理を任せきって、自分は研究に没頭しているみたいだから、頭が上がらないみたいなんだよね」 「確かに元に戻ればいいなと思いますけど、蔦下さんが来る前みたいになるよりは、今のままでいいです。また副館長や片岡さんの笑顔が見られなくなるのは悲しいですから」  くらげちゃんもちゃんと気づいていたんだな。本当にあの頃の加住水族館は、酷い有様だったもんな。  みんな余裕がなくて、ギスギスしていた。  笑顔がトレードマークみたいな片岡さんですら、ほとんど笑わなくなっていたし。  くらげちゃんが、あの頃に戻って欲しくないと思う気持ちは、僕もよくわかる。 「くらげちゃんはお客さんなのに、ごめんね。こんな話をして。もうさ、どうにもならないよね。どうせ夏の終わりにはなくなるんだし」  くらげちゃんは、僕がそう言うととても悲しそうな顔をした。 「怜音くん」 「どうしたの?」
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