3. バックヤードで会う時は side怜音

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「加住水族館はどうしても閉館するしかないんでしょうか」  どうして閉館しないといけないんだろう。僕だって何度も同じことを思った。  でも、どうすることもできないんだ。僕にできることなんて、何もない。  そんな自分を責められているような気がして、僕はすぐに返事ができなかった。 「僕らにはどうしようもないんじゃないかな」  そんなふうに割り切れるわけがないのに、僕は自分に言い聞かせるしかなかった。  赤字経営の水族館を早くなんとかすべきだという声は、以前から結構あったんだと聞いている。  市議会でも、リフォーム工事をするとか、もっと目玉になるものを入れるべきだとか、色々意見があったらしい。反対に閉館派も結構いたみたいだけど。  閉館派の市議会議員が館長になりさえしなければ、きっと違っていたんだ。  僕は、実際の経営状態なんか知らないけど、わざとだったんじゃないかと思ってしまう。元々、水族館や動物園に反対する動物保護団体の人だったという噂だってあるし。  でも、そういう館長が選ばれたということは、加住水族館なんて必要ないと思う人が多かったってことなんだよな。
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