1.近くて遠い街 side怜音

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 親父が別れた妻のことをまだ気にしているなんて驚きだった。 「仲のいい人はいるよ。昔の仕事仲間みたい」 『その人と怜音も会ったのかい?』  親父の声のトーンが明らかに下がった。 「ああ。僕も一度一緒に食事をしたけど、悪い人じゃなさそうだったよ」 『そうかね……』  あんなに喧嘩ばかりしていたのに、まだ親父はステラのことが好きなんだろうか。  喧嘩じゃないか。ステラが一方的に怒っていて、親父はただ黙っていただけだもんな。  もしふたりが元に戻ったら、僕ももう一度、ここに戻ることができるのかな。 「気になるのなら、どんな関係なのか訊いてみようか? 僕もよくわかっていないんだ」 『いや、いいんだ。元気そうならそれで。私にはもう、ステラに干渉する権利はないからね』 「そっか」  僕に干渉する権利ももうないと思っているのかな。もう他人なんだろうか。――気になることはたくさんあるのに、ひとつも僕は口にすることができない。
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