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親父が別れた妻のことをまだ気にしているなんて驚きだった。
「仲のいい人はいるよ。昔の仕事仲間みたい」
『その人と怜音も会ったのかい?』
親父の声のトーンが明らかに下がった。
「ああ。僕も一度一緒に食事をしたけど、悪い人じゃなさそうだったよ」
『そうかね……』
あんなに喧嘩ばかりしていたのに、まだ親父はステラのことが好きなんだろうか。
喧嘩じゃないか。ステラが一方的に怒っていて、親父はただ黙っていただけだもんな。
もしふたりが元に戻ったら、僕ももう一度、ここに戻ることができるのかな。
「気になるのなら、どんな関係なのか訊いてみようか? 僕もよくわかっていないんだ」
『いや、いいんだ。元気そうならそれで。私にはもう、ステラに干渉する権利はないからね』
「そっか」
僕に干渉する権利ももうないと思っているのかな。もう他人なんだろうか。――気になることはたくさんあるのに、ひとつも僕は口にすることができない。
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