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親父、ちゃんと僕のことも人員に入れてくれているんだ。もしかしたら迷惑なんじゃないかと思っていた僕は胸を撫で下ろした。
入口の重い開き戸を押して、加住水族館に足を踏み入れる。入館受付の窓口には誰の姿もない。
相変わらずスタッフ不足で、チケット売り場と入館受付の窓口が兼任になっているんだろう。どうせ平日の夕方はお客さんが少ないし、そう困ることもないんだろうけど。
片岡さんがチケットはいらないと言っていたし、このまま入ってしまっていいよね。
入館受付の窓口から、中腰になって事務室の中を覗いてみると、一番奥のデスクで親父が電話をしていた。真剣な顔でメモを取っていて、僕に気づく様子はない。
親父と話すのはあとでいいか。片岡さんに言われたように、館内を見てこよう。
窓口から離れ歩きだした僕は、壁に貼られた『加住水族館閉館のお知らせ』というポスターを見つけた。
わかっていたことだけど、夏の終わりになったら、本当にここはなくなってしまうんだよな。
加住水族館が夏の終わりに閉館すること知ったのは、まだ春になる前。親父から掛かってきた電話でだった。
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