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「……ちょっ、と待て……」
今私は、彼の下で虫の息に近い状態で枕に顔を埋めている。
「何だ、同族が初めてって訳でもないだろう」
ケリーは動きを止めて身を屈め、私の頬に口を付けてから一旦その体を私から離した。
ようやくまともに息をつけた私はシーツを胸元まで引き寄せてから乱れた髪を纏めた。
「一日数回からの交尾をし射精に何十分も掛ける狼は私の同族じゃない」
「それでも近縁には違いないし、ここの住人は所詮人とのハーフみたいなもんだからな。そこまでは酷くない」
と言いつつも、彼のそれは硬く盛り上がり相変わらず満足していない様子を物語っている。
「現に動物ん時みたいに入れたら抜けないって訳でも無いし……だけどあんたのは堪んないな。並の男なら骨抜きだったろう?」
何故か愉しげにそんな事を言う。
「そういうのは余り考えた事は無い」
「あんたみたいに知性が勝ちすぎるとおざなりになるもんだ。そんなにいちいち構えなくていい」
「構えてなんか……わっ!?」
ケリーは私の胸の下に腕を入れ、引き寄せると胡座をかいている自分の膝の上に乗せた。
耳元に顔を寄せて私の脚を撫でている。
「あんたはどこも美しいな。長い足も、この俺の手に余る胸も」
そうやって下から掬い上げた胸を包む。
衣服の上からでも見て取れた筋肉質そうな体は脱ぐとやはり思った通りで、盛り上がった胸と肩の間に頭を置くと心地良い。
「髪も解くと、夜に閉じ込めちまうみたいに見る者を捕える」
そしてこれでもかという程、温度差を感じさせるこの男の話し方はわざとなのか。
「こんなガサガサで骨張った手と日に焼けた体のどこが……あ」
座したままで私を持ち上げたケリーが再び自身を私の中に埋めた。人並み以上の大きさのものをまた拡げながら穿たれ、ひッ、と声を上げる。
「ぁ、ま、また……おまえ、は」
「ゴーダ、無理に意識しようとするな。何も考えるな……さて、彫刻について教えてくれ。手先は器用な方だから心配しなくていい」
「何、を言って……」
「またさっきみたいに音を上げる位に激しいのが好みか?」
耳に届く小さな声は特にからかっている様子もない。
「…………まず、設計図、を描くんだ」
「ありがとう。そんな風に基本的な概要を話して欲しい。手を動かすのは後からする。その方が俺には早い」
そしてケリーは私の話を聞きながら私の頭の上でふんふんと頷きいくつかの質問をしつつ、それを咀嚼していった。
頭の回転が速く一つ言うと三つ先の疑問を投げてくる。
まともな私なら全く構わないのだが、こんな状態でこんな話が出来る奴はここにも人の世界にも滅多に居ないだろう。
「どうした? 木目の内側まで彫り込むのはタブーと言う話まで聞いたが」
「そう……最後の仕上げの時に、折れやすくなる、からだ」
「浮き彫りの側面は外側に向けて斜めにするといいんだな」
「そう、だ」
淡々と話しているだけにも関わらず、こっちはどうも息が上手くできない。
そしてどうでもいいが、こいつのはなんで全く萎えないんだ。
「少し動く」
「…ッん、ン!」
彼が動いた時にぬる、と内部が動きケリーが手に掴んだシーツを引き寄せた際それがぐぶ、と根元まで収まった。
「風邪をひくといけないからな」
そう言ってふわりと私の体にそれを巻き付けた。
「……っは」
「悦くなってきたか。 大分俺に馴染んできた……それで平刀の用途は」
「…………待っ…て」
先程ので自分の熱と考えようとする理性がせめぎ合って益々苦しくなり、浅い息を繰り返してケリーにもたれかかった。
「表面を慣らす時に、で合ってたか」
「っう、あ」
二本の太い指先が滑りぬるぬるとそこを撫でる。腰を引こうとするとわざと強く引き込まれてまた声を上げた。
そして再び指を差し込み襞や薄い肉、その周辺を挟んで擦る。
「あ、駄目、だ」
「何も考えるなと言った。……俺の足まで垂れてるな。辛かったら一度いくか?」
がくがくと動いてしまう腿を抑えながら責めてくる。そうされると私の方からは自分が色々されている所が丸見えになり、思わず目を逸らしたくなる。
「丸刀は寝かせて浅く表面を削ると柔らかに仕上がるが、最後に深く彫り込むと表情が出る。ゴーダ、あんたはどっちが好みだ?」
「………何の、話だ」
「何十分なんて言わない。ホンの数時間程だ」
「……待て」
思わず後ろを振り返った私に、ケリーは口角を上げその鋭い瞳を和らげて見詰めてきた。
「そうしょっちゅうはしないよ。あんたの仕事にも障るし。言ったろ?宝石の様に扱うと」
「ちょっと、待て」
「気にするな。ただ確かめたいだけだ」
何をだ、そう言おうとする口だけがぱくぱくと動き、音に変換する前に私は諦めた。やはりこいつが商売をしているなんて信じられない。
色々教えてくれて感謝する。そう礼を言いながら覆い被さってくる体。
……肌に刺さる様な、焼かれる様な、これはいつもの体の繋がりの一種なのか?
「何も考えるな」
ただ喘ぎ続ける私の耳許でケリーは繰り返し囁いた。
今晩は何も視なくて済むらしい、私はそれだけ理解した。
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