act.2

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「へぇ、【蜃気楼】って凄い豪華なんだね。部屋に風呂が付いてるんだ」 「アホか。俺の料金が高い理由はこういうのも付いて来るからだよ」 風呂の準備をしながら答える。 居室兼商売部屋に、風呂やトイレが付くのは売れっ子5人─つまり5部屋のみ。 7年前からこの部屋に住めるようになったけど─ 俺の料金が高くなるは、維持費が高くなるはで、俺にとってはデメリットの方が大きかった。 フェンディルのお陰で何とか体裁が整っている感じで、他の売れっ子の部屋に比べると格段に調度が少ない。 広々としていて良いだろう、と言ったら、フェンディルには『こういうのは閑散としている、と言うんだ』と苦笑いされたっけ。 「おい、風呂の準備が出来たぜ」 室内をキョロキョロしてたかと思いきや、ソファーですっかり寛いでいやがる。 お前の部屋か!?と突っ込みたいくらいの変わりようだ。 ショートタイム利用で来る安客は、室内の豪華さに畏縮する奴が(ほとん)どなんだけど、こいつはそれが一切無い。 寧ろ馴染んでいるようにも見える─仲間の様相からも船乗りかと思ったけど、本当は違うのか?
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