act.2

6/10
前へ
/57ページ
次へ
「ほらよ。まずは湯に入れ」 「お前は入んねぇの?」 「湯が(あふ)れる。第一狭くなるだろうが」 「良いからお前も入れ。お前後な」 二人で入ったせいで、湯が半分くらい(こぼ)れたんじゃねぇ? そしてやっばりクソ狭い。 成長期にベロベロと身長が伸びた俺は176cm、こいつも同じくらい、いやもう少しデカいかな? そんな大きい男が猫足のバスタブに二人…足が伸ばせん!! 「クソ狭いな、やっばり」 「だから言ったろうが。出てもいいけど、湯が半分になる。沸かすまで少し時間がかかるぞ?」 「いや、このままが良い…あ、お前が嫌だったらしょうがねぇけど」 「客はお前だろうが。俺の好みなんぞどうでもいいよ」 「あのなぁ、お前の好き嫌いは大事だろうが。自分を粗末にすんな。 …で、この状況、お前は嫌か…?」 「嫌じゃない…くくっ、お前、面白いな」 「そうか?あとお前じゃねぇ、アンヴェル・ノーウェスだ。お前は?」 「俺はジェイル・キトフェル。くくっ、男娼相手に名乗る奴もそうそう居ないぞ?」 「そうか?名乗りはコミュニケーションの基本じゃねぇの?」 「あはは!穴相手にコミュニケーションかよ!あははふぁっ!?」 振り返ったアンヴェルに鼻を摘ままれた。 慌てて振り払い、抗議しようとしたが── 「自分を粗末にすんな、つったろ?そういう自虐的な発言禁止!」 口を尖らせて、めっ!って …俺は(たま)らず大爆笑した。 俺、子供かよ!? お前、怒ってんのに可愛いってどうなのよ!? 俺に大爆笑されて拗ねたらしいアンヴェルを、後ろから抱き締めてナデナデしてやったら『子供じゃねぇ!』って怒ったけど、やっばり可愛い。 俺は再び大爆笑した。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加