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act.1
大陸中心部から北にある小国が俺の出身地。
大国に挟まれた小国は、特に目立った産業もなく貧しかった。
俺の家は更に貧しく、親父は酒飲みだった。
酒場で働いていたお袋は、そこで親父と出会った。
そして酒場で働き続けたお袋は─
俺が物心ついた時分に、親父と同様、酒場で出会った男と家を出て行った。
飲んだくれの親父は、俺が10歳の時にとある娼館に俺を売った。
そこは酷い店で、10歳の俺を碌に仕込みもせずに客に売り出した。
身体中が引き裂かれるかのような痛みを抱えて、それでもなお客の待つ部屋に引き摺られ、ひたすらぶちこまれる日々。
服を着ているより時間よりも裸でいる時間の方が圧倒的に多かったその店では、風呂と称して水をぶっかけられ、食事と称して残飯にもならない食い物を出された。
貧しく、暴力に溢れた生活をしてきた俺でも、流石に参った…
腹が減り過ぎて動けない─俺は間もなく死ぬんだろうと、ぶちこまれ、喘がされながら考えていた…
【蜃気楼】の主に引き抜かれたのは俺が12歳の時。
見目がそれなりに良かった俺に、主は『稼ぐ気があるなら仕込んでやる』と言った。
この店では碌に食べさせて貰えなかったから、『飯が満足に食えるなら何でもやる』と答え、港町に程近い蜃気楼に移ったのであった。
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