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act.2
その客は、とにかく『可笑しな客』としか言い様がなかった。
「うわっ、ここ、男も居るんだな」
「若大将、野郎なら毎日散々見てるだろうが!
ここは別嬪の女を選ぶ所だぞ?」
「俺はどっちにも興味ねぇんだよ!
とにかく、気持ちよく寝かせてくれれば文句は言わねぇ!」
「【蜃気楼】はここら辺では上等な娼館さ。
みんな気持ちよく寝かせてくれるさぁ!」
賑やかな一団の中、風体の上がらない男は若大将と呼ばれていた。
焦茶の癖毛はボサボサに伸びきり、無造作に括っている。浅黒い肌は日焼けか?
うん、船乗り達かもしれないな。
若大将とやらは一人一人を見て回る。
娼婦も男娼も、大勢の客に燥ぎ我先にと群がっていたが、俺はさして興味がなく、奥の方にのんびり座っていた。
─船乗りは小金持ち、しかし俺の高めな料金価格に手が出ない事が多い。
それに下手くそなのに気が荒い奴が多く、俺的には面倒臭い客の部類だ。
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