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受付に戻ってる最中、リクは何処か考え事をしてるように受け答えに意思が無かった
人の顔色ばかり伺って育ってきたから、
その辺りは察してしまう
思わなければ気にしないのに、気にしてしまう自分は面倒だ
「 Bランク昇格おめでとうございます!次はその果実の中に書かれてますよ 」
受け取ったBランクになった証である青い石を一旦、小さな袋に入れポケットに突っ込み
果実を見てから、開こうと蓋のように回せるじゃないかと思い力を込めた
「 フゥッ、うぅん!!うん、びくともしない 」
「 なにしてんだ? 」
「 いや、回せば開くかなって 」
そんな切れ込みなんて無いけど、取り敢えず回して見たくなるもの
違うなら踏んで開けるか?と下に置こうとしたらリクは片手を差し出してきた
反対の手には小ナイフがある
「 あ、宜しくお願いします 」
「 嗚呼 」
こうやって開けるんだ、とばかりに果実を受け取った彼はナイフを軽く刺してから中央にそって切り込みを入れた
なんとなく、アボカドを切るやり方に似ている
「 ほら、これだな 」
やっぱりアボカドの種みたいに、中央には丸いカプセルが入っていてその中を開けば折り畳まれた紙がある
もう少し、カプセルがデカくても良かったんじゃないか?と思うぐらい
小さく折られてるから、開くのが大変だった
「 えーと、Aランク以上の猛獣を使役し、見せに来い 」
「 俺がいるから必要ないな。よし、行くぞ 」
「 えぇ…そんな感じでいいんだ…… 」
猛獣使い用の任務だと知ったけど、リクでいいんだと思えば彼は、私の手首を掴み歩いていく
黄金の果実って見た目だけで、食べれないんだ
ポイって捨てられてるのを見て残念に思う
まぁ、ピカピカ光ってた時点で怪しかったけど、本当に取って中身を見るだけなんて…
というかあのラードーンが差し出してくれなかったら、中身の内容は自分に合って無いんじゃないか?
「( あー、なるほど……)」
だから取ろうとした奴が失格なのは、そういう事なんだな
「 リクもラードーンだった? 」
「 いや、他の国だったから違ったが…似たような適性検査だったのは確かだ 」
「 リクの職ってなに?なんか、職事にAランクから変わるみたいだけど… 」
「 俺は竜騎士だ。そうなるよう…に合格しただけだがな 」
ん?竜騎士って、騎士様の更に上の位じゃ無かったけ?
というか、そうなりたいから合格したって…その時の試験官は驚きだろうなぁ
急に強い人がやってきて、竜騎士になりたいだなんて……
いや、深く考えたら闇すぎるから止めた
「 リクって、行動派? 」
「 いや、俺は頭脳派だ。短い期間で、どれだけ早く昇格するか…それしか考えて無かったからな 」
「 へぇ…… 」
やっぱりリクはちょっと抜けてると思う
そんな所に拘るから、その日で昇格し終えるなんてきっとあっただろう
いや、私もそうなるとは思わなかった
「 流石都心って感じ、広〜。建物でかぁ…… 」
「 おい、あれ…グリフォンじゃないか 」
「 希少種であり、生息数が少ない幻の猛獣が…なんであんな小娘に?? 」
「( うん、さっさと去ろう )」
銀髪の男性より、明らかにグリフォンの姿の方が目立つなら、さっさと見せてからSランク任務を受けたくなった
この街に、長いをしたらテレビ局が来ても可笑しくないと思う
テレビ局なんていないと思うけどね!
それに、リク口を開かないし……
希少種が喋ったならもっと騒がしいだろうけど、この状況で一人みたいなの嫌だよ
「 森に帰りたい…… 」
「( 諦めろ )」
………………
……………………
どうも、引き篭もり根暗ニートです
現在…歩く度に突き刺さる視線という矢によって死にかけてます
もう、ライフがゼロに近いのに一向に、紙によって指定された建物が見えて来ないんだけど
寧ろ、ちゃんと行けてるか微妙なぐらい、どの辺を歩いてるのか分からなくなってきた
リクは人前だから口を開いてくれないから、
自分で探さなきゃ行けないけど、やじ馬が増えて集中力が切れてくる
それに目を見ただけで、その人の″ 真名 ″が入ってくるから余計な情報が頭に流れてパニックになる
話し掛けようとしても、無意識に真名を告げたら如何しようかと思ってしまうから、声を掛けるタイミングが無い
「 はぁ……聖堂ってどこ… 」
教会らしき場所があるはずなのに、広い街のせいでそれが見当たらないから疲れてきた
1つ息を吐き、手を下げればリクは動いた
「 なに? 」
クイッと服の裾を咥え、引っ張るリクに何を伝えたいのか傾げれば、彼は自らの背中へと視線を向け、その場でしゃがみこむ
「 あー、ありがとう 」
その動作に納得して、有り難いと背中へと跨れば彼は早々に立ち羽を広げ空へと飛び上がった
「「 おぉ!!飛んだ!! 」」
そんなにグリフォンは珍しい存在なのか?
それがよく分らないけど、歓声を遠くに聞いた後、上空から聖堂を探す事になった
「 助けるのが遅い 」
「 そう言われてもな。人に慣れるかと思ったんだ 」
「 そんな直ぐには無理だよ……。あんなに大勢だと真名が頭に入って来て気持ち悪かった 」
真名を呼んではダメ、そんな認識があったからこそ、尚更居辛かった
もしかしたら、リクに向けられる視線よりそっちの頭に入る情報の方が嫌だったかも知れない
「 真名を読み取る事に慣れて来たな。随分と早く、猛獣使いの力を使いこなすものだ 」
「 使いこなせてはないよ…。それに、こんなに目が合っただけで真名が分かるなら……。天空竜には悪いけど、この天性は…邪魔だと思う 」
覚える必要の無い他人の名前
興味すら無いからこそ、いらない情報が入るとややこしくなる
こんなにも邪魔な天性を、何故、天空竜はくれたのだろうか
「 もう少し扱いに慣れたなら、いらない情報は入らないはずだ。まだまだ経験が足りないな 」
「 なんの経験……。でも、シャットダウン出来るならいいかも 」
いらない情報が勝手に流れ込んでくるのを止めれるなら、経験とやらを積んでも良いかもしれない
それには、この人の真名はいらない、こっちはいる、みたいに判断して意識すれば出来るようになるらしいけど…飛びながら下にいる国民を見てやってみたけど
無理だった、意識するほど入ってくる真名はやっぱり肝心な時にだけ使えるぐらいがいいよ
「 あったぞ、あれだろう。教会 」
「 真っ白な建物……。屋根にドラゴン?の置物がある 」
「 人が生まれたのはドラゴンによってだからな 」
神様を祀るのではなく、ドラゴンを祀る
やっぱりちょっと違うんだなって改めて思えば、人が少ない教会の入口付近に降り、リクの背から下り、彼はそのままの姿で中へと入る
「 お邪魔します…… 」
3頭のドラゴンの装飾が施された、大きな扉を開けば中は広い聖堂になっていた
中央の通り道は広く、左右に並ぶ椅子、真っ白な柱は迫力がある
こんなにも綺麗な大聖堂に試験官がいるなら、神官だろうか?と推測を立て歩いていけば、横から一人、男性っぽい人が出て来た
カソックを着て、顔を大きな黒帽子で隠し、口元に黒い布をした男性は中央の教壇の前に立った
「 よく来てくださいました。Aランク昇格試験の方ですね? 」
「 はい、ルナです。宜しくお願いします 」
「 ルナ様。では…紙をお見せください 」
やっぱりこの男性なんだと確信して、ポケットに入れていた試験内容が書かれた紙を差し出せば、何処から見えてるのかわからないが
神父は紙を見てから、小さく頷いた
「 此処に、Aランク昇格試験である。Aランク以上の猛獣を…! 」
「 わっ……! 」
急に背後に現れた大きな紫色の魔法陣
紫色って事はAランクのカラーに似てると思い、ちょっとだけ横に移動してから、神父を
見れば彼は片手を魔法陣へと向けた
「 これはランクを測るものです。安心して、猛獣を乗せて下さい 」
安心して、と言われて安心は出来ないけど
下手な事はしないだろうし、リクも嫌そうな顔をしてないから、素直に頷きリクの首元に触れる
「 リク、魔法陣の中に入って 」
「 グゥ( 嗚呼 )」
リクが猛獣使いの中には、カード、本、装備品等に猛獣をしまい、必要な時に呼び出す召喚系の奴も居ると言っていた
だから神父は他にも、猛獣がいるのなら適切な猛獣を出すだろうと、敢えてリクだとは思わなかったみたい
リクが魔法陣の中へと入り、中央に立てば魔法陣の色は黄金色へと変化した
「 おや……グリフォン次第が高ランクとは知っていましたが…。この個体は特殊個体のようですね…Sランク+。属性 空。風と水があるようですね。貴女の使役に間違いないようですし…Aランク共にSランクも合格ですね 」
特殊個体とは、同じ種類の中でも飛び抜けて能力が高い個体らしく
リクはそれに匹敵するらしい
だから、その辺のグリフォン、強いなんて…本人が言ってたけど特殊個体だからか…と分かりきったように納得はできないけどね!
全く、わからないし!!
「 えっ、今ので終わりですか? 」
「 はい。Sランクの試験も…Sランク以上の猛獣の使役ですし…。飛び級で構ません 」
「 えぇ……そんなあっさり…… 」
もっとこう、別の事が有るのかと思ったけど
猛獣使いが、猛獣を持ってるだけでランクが上がるなら他の人達はいったいどんな試験なんだろうかと思う
呆気なさに現実味がしないけど、神父は黄金色の石と手元に現れた魔法陣と共に金の背表紙の分厚い本を向けてきた
「 猛獣使いの実力は、使役出来るランクで決まります。貴女はBランクでありながらSランクの猛獣を持っているのですから…、態々試験会場を変える必要も無いですよ 」
なんとなくリクのさっさと上がって、ランクアップだけしとこう
みたいな雰囲気と似てると思い、頷いてる事にした
猛獣使いと猛獣は比例してるなら、私自身もSランクの能力があるってこと?
いやいや…へっぽこ冒険者なんだけど…と心の中で首を振る
「 これは昇格した記念のプレゼントです 」
「 プレゼント? 」
黄金色の石は分かるけど、分厚い本が何なのか分からず首を傾げて、本を受け取れば
思ったより、ずっしりとして重い
「 それは一体のみ精霊と契約出来る魔法書です。この世に住むどんな精霊でも呼べますが、ランクはDからSまでなので…実力次第ですね。召喚後は名付けて終わりです 」
本は返す為に、此処で呼ぶ必要があるみたいだけど…
これは、ゲームで言うガチャみたいなものだろうね、と言うかきっとそうだ
「 猛獣と精霊って違うんですか? 」
「 全く違いますよ。猛獣は生を受けて生きている獣。精霊は自然の気が具現化したものなので死ぬ事が無いです。契約者の力となり、契約者が死ねば解除されます 」
猛獣の場合も、使役されてるのが消えるが
精霊よりも、主を覚えてる奴が多いらしい
精霊は終わったらさっさと住んでる場所に戻るって…
なんとなく、猛獣は飼い主に置き去りにされた犬や猫みたいなんだなって思う
「 でも、私は…精霊いりませんよ?この子がいますし…… 」
この子、と言っていいか分らないけど
リクは猛獣が増える事を嫌ってるし、私だって仲間が増えて死に辛くなっていくのは嫌だ
折角、無償で精霊を貰えるチャンスだけど…
いらないと首を振れば、神父より先にリクが答えた
「 別にいいんじゃないか。精霊は俺のように図体がデカくないし、姿も消せる。どんな場所でも呼べるからいざという時に役に立つ 」
「 ……… 」
喋らないんじゃ…と冷めた目を向けていれば
神父は平然と頷く
「 えぇ、精霊を持っていても、食事などは必要ないですから居てもいいと思いますよ 」
あれ?なんか…猛獣は食事が必要みたいな言い方だけど、他の猛獣は食べ物が必要なの?
益々、リクの存在が謎過ぎて疑問になるけど…リクも納得したし、やってみることにした
「 分かりました。召喚させて貰います 」
「 えぇ、精霊は貴女の心に反応して、より近い者が現れる、映し鏡です。良きパートナーと出会えますように…… 」
「 自分と似た者……えぇ…… 」
そう言われると何となく嫌だな
自分みたいな根暗な奴が現れたら、契約をする事なく退散を願うと思う
何となくリクも口角を上げてる辺り、どんな精霊が出るのか楽しみで仕方ないのだろう
私は何一つ楽しみでは無くなってきた
けれど、言ったからにはやるしか無いと分かり
彼等と少しだけ離れて、本を手にして目を閉じる
どんな呪文なのか、魔法なのか、それすら分からないまま、意識を手元へと向ければ急に本は開きパラパラとページが捲られ、1箇所で止まれば、足元に金色の魔法陣が現れた
「 なに……!? 」
呪文もなく、目の前が光
驚いて顔を背ければ、羽の羽ばたくような音に眉を寄せ顔を向ける
「 わ…… 」
全身を真っ白な羽で隠した人のような者は、辺りに羽根をヒラヒラと落としながら
僅かに空中に浮いていた
閉じていた羽は左右に開けば、姿を見せた
金色の髪に青い瞳をした、まるで天使のような男性だった
「 ……この俺様を呼んだのはテメェか? 」
うん、返品を御願いします
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