スマートな僕に

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 低速で近くのこぢんまりとした公園に移動した。  適当なところに自転車をとめて、自販機からスポーツドリンクを購入する。 「ゴクッゴクッ……ふぅ。冷たくて美味しいなぁ」  夏の息切れはこれに限る。  秒で空になったペットボトルを頬に当てて名残惜しむ。3秒もくっつけていると、ひんやりと心地よい感触がもんもんと脈打つ熱を返すようになる。 「え?」  妙な生き物と目が合った。  いや、人間だけど……犬? 猫か? なんなんだ?  板製のベンチの脇に、ダンボール箱の中で体育座りをする少女がいた。あどけない表情でこちらを見つめいてる。まるで捨て犬や猫のそれだ。 「もしかして、藤野……さん?」  女子の名前を覚えるのは苦手だったけど、彼女の名前だけは覚えている。中学生の頃、裸の上半身を見せてしまった相手が藤野さんだ。  藤野さんはいじられキャラだった僕のあの痴態を見ても、誰にも言わないで秘密にしてくれた。とてもありがたかったなぁ。
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