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3日後の下校道。
心臓破りの坂を登ったところで、動悸がして足が止まる。
すこし行ったところにこぢんまりとした公園がある。そこには冷たくて美味しい飲み物がある。座って休めるベンチもある。ベンチの脇には……いや、まさか。
喉の渇きに負けて、自転車を降りて恐る恐る公園をのぞいた。
「いないなぁ」
緊張感が減り、罪悪感が増える。すこしだけ寂しい感じもする。
誰かに指先で肩をちょんちょんと触られた。
『遊ぼう!』
大学ノートを両手で掲げた笑顔の藤野さんがそこにいた。
驚く間もなく、僕の手を取って走り出した。勢いに流されて僕も走った。体力は限界を迎えていたはずなのに、不思議と足取りが軽く感じられた。
そのまま公園を2周してギブアップ。我ながら快挙だと思う。
すがる思いで自販機のボタンを押す。乾いた音を転がしながらスポーツドリンクが落ちてきた。
一気飲みする僕を、藤野さんが羨ましそうに眺めている。
「……飲む?」
『うん』
ノートを向けられる前に、だろうなぁ、と予想はついた。
「あっ」
お金がない。
物欲しそうに近づいてくる藤野さんに、どう言い訳をしよう。なんて考えていたら、飲みかけのスポーツドリンクを盗られてしまった!
藤野さんはなんのためらいもなく飲み干した……。
『美味しいね』
「そ、そうだね」
青春ってこういうのをいうのかぁ。藤野さんに他意はないのかもしれない。恋愛初心者の僕には刺激が強すぎる。
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