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『毎日走っていたよね? すごく努力していたのに、私が邪魔しちゃったから』
またもやショッキングだった。悪友にお腹をぽふぽふ触られるのが嫌で、一念発起のダイエットを密かにしていた。
早朝に最寄りの公園まで出向いて、上半身裸でランニングするおじさんにならって僕もそうしていたんだ。
「クラスメイトに知られていたなんて思うと、恥ずかしいなぁ……」
藤野さんはいたずら小僧のような笑みを顔にたたえて、至近距離にまで近づいてきた。そして、くっつけた。おでことおでこを。
――およそ3秒間。
ひんやりと心地よい感触が、どちらがともなくもんもんと脈打つ熱を返すようになる。無機質なモノにはない安らぎがあった。
離れ際にノートを手渡される。
『数年後。努力を続けたあなたとまたここで会いたいです!』
これって……つまりはどういう――
「藤野さん! あ、あれ……? 藤野さんも頑張って!」
藤野さんは背を向けて歩いていた。飛ばしたエールに小さく一つうなずいて、そのまま公園から出て消えてしまった。
こっからは一人で努力しろってことかなぁ。
いつかスマートになった僕を見てもらいたい。
僕はその場で上半身裸になって、公園の内周をひた走る。このほうが走りやすい。もう周囲の目なんてどうだっていい。
僕は、僕と藤野さんのために走るんだ。
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