1人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだよー! また小吉だぜ。ここの神社全然ダメじゃん」
大きな声で不満を口にする男子高校生。
「そうなのよね、ワタシも一流高校に受かりますようにって絵馬まで買って願掛けしたのに二流高校にしか入れなかったのよ」
男子高校生に相槌を打つ女子高生。二人とも仲良く愚痴をこぼしながら狛犬の横を通って境内の階段を降りて行った。
神社の入り口を守っている狛犬は心の中で悲しそうに呟く。
あの女子高生、本当は事故で命を失っていたはずなのに……命を救ってあげた代償で高校のレベルが落ちた事を知らない。たとえ一流高校に受かっても楽しい高校生活を送れなかったら意味がないのに。
あの男子高校生だって、ホントは大凶で帰りに交通事故で大怪我する予定なんだけど……きっと彼女と喧嘩するぐらいで収まるんじゃないかな。
うちの神様も人が良いから、神社に来た信心深い人間の運気をコッソリと上げてるのだもの。でも人間達はそんな事も知らないで自分の願い事が100パーセント叶わないと文句しか言わないし……ハァ、困ったものだ。
さてと、彼が引くハズだった大凶のおみくじと彼女の死相のお札を隠しに行こうかな……そう言って狛犬は台座の上からスッと降りて神社の裏手の倉庫に向かう。
狛犬が倉庫の扉を開けると、そこには悪いおみくじや不吉なお札といった『神様の隠し事』が山のように積まれていたのだった。
了
最初のコメントを投稿しよう!