腕を愛でる

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 僕が初めて腕と出会ったのは、まだ子供の時分だった。  確か小学生の頃だったかな。    ちょっと家がゴタゴタしてて僕は田舎に預けられたんだ。  覚えてる?  うん、そうだろうね。  その頃はまだ爺ちゃんたちの家に馴染めていなかった。  二人は気を使ってお菓子がほしいか、遊びに行こうかって誘ってくれたけど、僕はただ首を振るばかりだった。  仕方がないという顔をして二人は部屋を出て行ってしまって、自分から拒否しておいて僕は少し寂しくなった。  勝手なものだね。  ふてくされて寝転んでいると、畳みを引っ掻くカリカリと音がした。  二人が戻ってきたのかと起き上がってみたけれど、広い和室には僕だけしかいない。  ひょっとしてネズミかなって思った。  本物のネズミなんて見たことなかったし、どう対処すれば良いか分からなかったから、ちょっとドキドキして辺りを見回したんだ。  するとね。  正面の(ふすま)から、腕が出ていたんだ。
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