腕を愛でる

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 腕はとても白かった。  僕はそれが女のものだと思った。柔らかい曲線や肌のきめの細かさから、そう感じたんだ。  腕は整った爪を畳みに立てていた。引っ掻いていたのはこの腕だった。  どう見ても若い人のものだ。爺ちゃんでも婆ちゃんのものでもない。  誰かお客さんが来てるのだろうか。  でも、この人はいったい何をしているのだろう。  話しかけるでもなし、襖を開けるでもなし、ただ畳みを引っ掻いて存在を主張している。  僕は好奇心から立ち上がって襖に近付いた。  向こうも僕に気が付いたのか、腕はさっと引っ込んでしまう。  相手の正体を掴んでやろうと襖に手をかけ、勢いよく開け放った。  そこには悪戯の犯人がいると予想していた僕は、呆気にとられる。  襖の向こうには隣の部屋なんてなかった。  僕は部屋があると勘違いしていたけど、襖の先は物置だったんだ。  とても人が入れる空間なんてない。  いや、そんなはずはない。  だってさっきまで腕がここから出ていたんだから。  じゃあ、その腕の主は?
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