腕を愛でる

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 廊下を歩いていると、酔っ払った叔父さんの声が客間から聞こえた。  とくに盗み聞こうなんて考えたわけじゃないんだけど、声は大きくて嫌でも耳に入ってきた。  僕は叔父さんの話の内容に、我知らず足を止めていた。  叔父さんは何の話をしてたと思う?  いや、分かるよね。  分かるはずだよ。  叔父さんはね。父さんと母さんが離婚した理由を話していたんだ。  今まで詳しい事情は知らなかった。なんとなく、聞くのがはばかられたんだ。  だから、まさか父さんが不倫していたなんて想像もしていなかった。  相手の人は地元の女性で、父さんとは学生の頃から知り合いだったらしいね。  叔父さんも面識があるようだった。  なかなかの美人だと言ってたよ。  社会人になってから会うことがあって、すごい美人だな、でもだったらもう付き合っている人はいるよなって、ふと手を見てみたんだ。  しなやかな白い手だった。  美人は手もキレイなんだと感心したって、叔父さんは笑ってた。  で、よく見ると指にホクロがあったんだ。  人差し指に三つの黒点が並んでいたんだって。  ちょっと特徴的だったから記憶に残ったらしい。  でね。  あの腕にも、同じ場所にホクロがあるんだよ。
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