腕を愛でる

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 それにしても、最近はずいぶんと涼しくなったなあ。  仕事が立て込んで夏休みを取れたのがこんな時期になってしまったけど、逆によかったかもしれないね。  でも、帰省を待ってた爺ちゃんと婆ちゃんには申し訳なかったな。  久々に帰れたというのもあるんだろうけど、二人ともすごく喜んでくれたから。  爺ちゃんと婆ちゃんは子供の頃からよく可愛がってくれた。  婆ちゃんは僕が食べたいと言えば何でも作ってくれたし、爺ちゃんはよく山に連れて行って色んなことを教えてくれたよ。  就職してからはなかなか会えなくなってしまったけど、帰ると必ず僕の好物で食事を作ってくれるんだ。  二人に変わったところはない?  体調崩したりしなかった?  どうせ僕が聞いても大丈夫って言うだろうからさ。何かあったなら教えてほしいんだ。  そう。なら良かった。  じゃあ、明日は安心して帰れるよ。  こっちで過ごせたのは数日だけだったけど、やっぱり育った家は落ち着くね。  本当はもっと早くに帰りたかったんだ。  だけどそうもいかなくて。  ああ、もちろん、爺ちゃんと婆ちゃんに会いたかったっていう理由もあるさ。  だけどね、実を言うと僕が帰りたかったのには、他に理由があるんだ。  ふふふ。  今までずっと黙っていたんだけどね。  せっかくだから、教えてあげる。  僕はね。  腕に会いたかったんだ。
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