かくす、かくす。

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かくす、かくす。

「ちょっとミャーコ!もう、庭に玩具隠すのやめてって言ってるじゃないのー!」  リビングで私が抱き上げて説教をしても、黒猫のミャーコはつーんと知らんぷり。犬がお気に入りの獲物や玩具を庭や毛布の中に埋めようとするのはよくあることだが、ミャーコは猫にもかかわらずすぐ同じことをしようとする困った子だ。おかげで、我が家の庭は彼女が穴掘りをした後で、穴ボコだらけになってしまっている。せっかくの芝生が台無しではないか。  しかも、玩具を隠しては掘り返し、それを使って遊ぶのですぐ泥だらけになってしまうのだ。猫は家に入る時に、汚れを落とすなんて考え方はない。その泥をそのまま家に持ち込むこともあるので、こっちは本当に困るのである。 「好きな玩具なら、ちゃんと家の中で遊びなさいよ。……ていうか、なくなったままの玩具も結構あっちこっちにあるんだけど。あんた、私の知らない隠し場所持ってるんじゃないよね?」 「ウニャ!?」 「……おい、なんだその鳴き声。図星か」  この猫、実は中に人入ってるんじゃないだろうか。私は睨みつけて言うと、変な声を出してそっぽを向いた。しっぽが一瞬びく!っとなったのも見逃さなかったぞ、と私は白目になる。人間の言葉はしゃべることができないが、人間の言葉の大半は理解しているような気がしてならない。脳みそちっちゃいくせに。 ――ミャーコ、庭に出すのやめた方がいいのかなあ。でも、外に散歩に行かせるのは危ないし。運動不足解消のためにも、庭くらいは自由に散歩させてあげたいし……ううん。  我が家は私、夫、息子二人の四人家族だ。私はパートの仕事があるし夫は銀行員、長男は社会人で次男は高校生である。つまり、昼間我が家には誰もいない状況が出来上がるのだ。寂しがり屋でおてんばなミャーコを、その間家に一匹だけにしておくことになってしまう。
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