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先野光介、三十八歳。以前は私立探偵として独立して事務所をかまえていたが、顧客がつかず廃業、やむなく興信所に就職して数年がたつ、ベテラン探偵である。ただ、他の探偵のサブに回ることが多いのが残念であった。
一方の三条愛美は二十七歳。若くして優秀な探偵と評価も高く、先輩後輩からも頼りにされて、いつも忙しかった。
「この場所を、さがしてほしいんです」
依頼者──九島信輝は、絵を指し示しながら、探偵の顔をうかがう。こんなへんてこりんな依頼を真剣に受けてもらえるかどうかを探るような思いが見え隠れしていた。電話で事前にある程度は話して断られなかったとはいえ、事務所までやってきたものの、やはり不安はつきないのだろう。四十歳ぐらいのこの男は、常識的な感覚を持っている、といえる。
一枚目の絵に描かれた交差点は、都会ではなく、郊外の山のせまる場所である。ただ、精緻に描かれたものではなく、ディテールは甘い。クレヨン画なので色使いも単純だ。それでも、他の雑木林に比べたら、まだ場所の特定はしやすいだろう。
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