見ていた景色

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 日に三、四本ぐらいしか吸わない先野にとって、タバコはアイデンティティだった。タバコを吸っている自分のスタイルが好きなのであって、愛煙家というわけではなかった。それは白の上下のスーツ同様、先野のへんなこだわりだった。探偵にはこだわりが必要なのだというのが先野の持論であった。  事務所に帰社した。情報を整理し、これからいよいよ調査の開始である。  仁哉が言っていた山の中腹に立っている「てっとう」とは、おそらく携帯電話のアンテナだろう。そして二個くっついた家、というのはたぶんハイツだろう。  他に、遠くに描かれているのが橋で、付近には川(川の名前は不明)が流れていることがわかった。名前の知らない山や、漢字で書かれてる看板など、まだわからない点もあったが、それらの手がかりを総合して、あとはストリートビューで根気よく調べて行けばわかるだろうと思えた。
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