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「物事にはなんでも、絶頂期があると思うの」
俺は黙って聞き役に徹する。
「私達4兄妹が、曜子さん家に同居し始めた頃が一番幸せだったかな」
そこで携帯の画面を操作し、写真を俺に見せた。外国らしい背景に、渉さんが女性の肩を組み満面の笑みを浮かべている。俺が会った時と全然違う雰囲気だ。
女性のお腹の膨らみは分からないが、彼女が曜子さん…渉さんが安息出来る人。
「渉兄がこんな笑顔を出来るなら、もう良いかなって思う…」
渉さんの隣で、はにかむ様に笑う曜子さんを見てから携帯を返す。
「真一さんは何て?」
「…まだ陸に言いたくない」
「?」
それが今日の主題では?
「呆れて話にならない!もう少し私の中で消化してから話すよ」
家族思いの彼女が憤慨著しい話。
怖くて聞きたくないが、
「綾香さんは平気なの?それで眠れないんじゃないの?」
「そうだけど…陸に幻滅されたくない…」
何だか一線引かれた気がした。
家族の恥部に、私の中に入るなと。
俺の優姉に対する未練とか、今まで結構恥ずかしい話を晒してきただけに、地味にショックだった。俺は凹んだ気持ちを打ち消す様に話を変えた。
「ところで、綾香さん仕事は?」
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