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ぶっきらぼうに挨拶を交わし、綾香さんと別れた。
住宅街を歩いて家路をたどる俺に、ついてくる月が煩い。
段々空気が澄み渡り、月の模様がくっきりと見える。
大人気なかったと反省する。
誰しも何某かの想いを抱えて仕事をしている。
焦る気持ち。
熱い想い。
創作の喜び。
誰かの為に淡々とこなす毎日。
綾香さんが何に重きをおいて仕事を選ぼうが自由だ。
俺がでしゃばる事じゃない。
俺も優姉も、昔他の誰かが作ったモノに補修をかけ綻びを直す仕事だ。
ピーク時の忙しさは半端ないが、綾香さんみたいに自分でデザインし材料を選定し、創作する仕事ではない。
だからその創作の熱量がイマイチ理解出来ない。
夢中になれる事に全勢力を傾けたい、それが出来ない未練?
歩調が落ち、月を見上げた。
綾香さんの未練を俺は非難できない。
仕事に対してではないが、そのやるせない気持ちを俺は誰よりも熟知してるではないか。
彷徨う気持ちは、日によって多寡を変える。
この夜空に燦然と輝く月のみかけの様に…
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