幸福≦仕事

3/4
前へ
/21ページ
次へ
住宅街を歩いていると、あの御屋敷跡地前に人が立ってた。 彼女の名は関口綾香。 彼女は優姉の友人で、俺が崇拝するプログラマー関口渉の妹だ。 優姉も人が悪い。 綾香さんの兄が俺が追っかけてた人だと知ってたのに黙ってた。 渉さんが渡米する段になって教えてくれた。 渡航するギリ間際に、優姉、綾香さんを介して渉さんに会えた。 憧れの人の歳は俺とそんなに変わらない。 マスクに隠されてない鋭い眼光は、鬼火が灯ってるみたいな独特の雰囲気。 渉さんの肌は青白く髪は胸元まで届き、一見女性に見える位妖しかった。 杭工事を一心に見つめていた綾香さんに声をかけた。 「こんにちは。新しい家立つみたいですね」 「…こんにちは」 「こないだ地鎮祭やってましたよ」 「そう…みたいですね」 「やっぱ分譲で売って正解でしたね」 いつになく口数が多い俺。 渉さんの妹だと思うと、ついテンションが上がる。反対に彼女は、口が重い。 俺はハッとして 「スミマセン!気付かなくて…実家が無くなって寂しいですよね」 何が分譲して正解だ、これだからコミュ障なんだ。 「…」 気まずい空気を破る様に、 「今、お住まいは?」 「母と公園近くのマンションに住んでます」 「お兄さん如何ですか?」 「まだ連絡ないです」 話がなくなり戸惑ってると、空腹で腹が鳴った。 「スミマセン!お腹が空いてて、今から食べに行くとこで…」 俺が赤面して去ろうとすると、 「真(にい)、一番上の兄のカフェに一緒に行きませんか?ここから近くだし、身贔屓じゃなく美味しいですよ」 そう言って微笑んだ彼女から、目が離せなかった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加