幸福≦仕事

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その店は、公園近くの民家と庭を改装した作りだった。 彼女が奥のキッチンにいるお兄さんに挨拶しに行ってる間リサーチしたが、口コミ評判が良い。 ロケーションだけの評価でなく、美味しいと好評だ。 彼女が連れて来た男性は、何処と無く彼女と渉さんに似てた。只、物凄く疲れたオーラを出していた。最近の俺と同じ位。 「初めまして、綾香の一番上の兄の真一です」 握手した掌は大きく熱かった。 「どうも…佐久間陸です」 「じゃ、ゆっくりして行って下さい」 一言二言兄妹が話し、俺に会釈して厨房に戻って行った。 「決まった?」 「どれも美味しそうで迷うな、綾香さんのオススメは?」 「全部オススメ!肉の気分か魚の気分かで決めたら?」 俺の目の前に座った時、彼女からふと芳しい香りがした。 優姉の話だと、綾香さんは人見知りタイプだという。俺も内向的さ加減では負けてない。 なのに不思議と苦にならない。 彼女の沈黙が心地良い。 時折話す声は少しハスキーで、更に落ち着いた。 仕事で死ぬ程忙しい合間の、綾香さんが教えてくれた至福のランチで、幾分ササクレだっていた俺の心が癒された。
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