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ヴァルリはくるっりと踵を返すと、再び来た道を戻ろうとした。
「あっ、ヴァルリ! どこへ行くんだい? 僕もついていくよ。だって……」
パートナーなんだから、と続くはずのリールの言葉は、ヴァルリの冷たいターコイズブルーの双眸に睨まれて死んでいく。
金髪のさらさらとしたストレートヘアに、そのターコイズブルーの瞳は見る者の印象に深く残るのだが、
「ついてきたら……、殺す!」
殺気と共に静かに言い放たれた言葉に、リールはなすすべなく、何も返せなくなるのだった。
そして再びヴァルリが歩き出そうとした時、ヴァルリの正面から鈴が鳴るような凜とした澄んだ声が聞こえた。
「探しましたよ、ヴァルリ、リール」
「国王様!」
弾かれたように見上げたヴァルリの視線の先には、違えようのない声の主、国王ラジェルの姿があった。
まだ若いこの国王は冴えた月のような美貌を持ち合わせていた。きめの細かい肌にすっと通った鼻梁、そして武道で鍛え抜かれたほどよい筋肉は国王の男性的な肉体を強調していた。何より印象的なのは、この国王の意志の強い、黒曜石のような真っ黒な瞳だ。
しかし今、その瞳を明後日の方向へと彷徨わせていた。ヴァルリの真っ青な双眸が、じとーっとラジェルを見上げているからだ。
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