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ラジェルは視線を彷徨わせたまま、うわずった声を上げた。
「どうかしたのかな? ヴァルリ」
「どうしたもこうしたもないですよ! 何でまた、オレのパートナーがこいつなんですかっ?」
ヴァルリは自分の隣に立っているリールを指さしてラジェルに噛みついた。
「お、落ち着きなさいヴァルリ……。これには大人の事情が深く関わっていると言うか……」
「国王様」
しどろもどろになるラジェルに、ヴァルリがじりっと詰め寄る。
ラジェルは思わず後ずさった。そんな二人の元にのんきな声が降ってくる。
「国王様、僕たちに急ぎの用なのでは?」
リールである。
ラジェルはこれ幸いというような安堵の表情になると、
「そ、そうなのだよ」
そう言って、コホンと一つ咳払いをした。そして今までの表情を一変させると、
「南の都ミュラーで、三十二匹の魔物が暴れている。急ぎ向かい、先に行った二人を援護するように」
それは国王が臣下に指示を出す表情だった。
「承知致しました」
臣下の礼を取るリールに対し、ヴァルリはまだ釈然としないようだ。しかしもたもたして任務に支障が出る事態は避けたい。
ヴァルリも少し遅れて臣下の礼を取ると、リールと共に南の都ミュラーへと向かうのだった。
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