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さて、その頃南の都ミュラーでは激しい攻防戦が繰り広げられていた。都といっても戦っている場所は郊外から外れた砂漠の中だ。
ミュラーは砂漠の街だ。いや、砂漠にあった大きなオアシスがそのまま街に発展したと言った方が正しいだろう。小さな都ではあったが、貴重な水と隣国との物資のやりとりでそれなりに人が住んでいる。
今回はそんな砂漠の中に魔物が現れたのだ。
オアシスの中に入る前に魔物たちを引きつけて食い止めているのは、まだ二十歳にも満たない少年たちだ。少年たちの目の前には黒く醜い、同じ形をした魔物の群れ。
「何なんっ? こいつら! めっちゃ多くないか?」
ブツブツと文句を言いながらも魔物をなぎ倒していくのは、切れ長のアメジストのような瞳を持ち、赤銅色の髪を逆立てた少年だ。
「うるさい。文句を言う暇があるなら、一匹でも多くこいつらを始末しろ」
そう答えたのはこの少年のパートナーだろう。
黒い髪に黒い瞳、そして全身黒づくめではあるものの、その黒はこの少年に不思議と良く映えていた。白くきめ細かい肌に美しい顔立ちをしたこの少年は、先程の少年よりも年上のように見える。
息一つ乱さずに魔物を切り倒していくその姿は、さながら舞でも舞っているかのような優雅さがあった。
「ピューサはホンマにクールやなぁ……。って、うわぁっ! 不意打ちなんて卑怯やで!」
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