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ピューサの戦いに口を出していた少年の左腕は、魔物からの攻撃により裂けていた。赤い線からぽつぽつと赤い水玉が生まれ、傷口はズキズキと痛み出したが、今はその痛みに構ってはいられない。
少年はすぐに自分に切りつけてきた魔物を真っ二つにした。しかし頭から股下まで切り裂かれた魔物は、その半身を再生させ、1体から2体へと増えてしまう。
「うわっ! また増えよった!」
「何を遊んでいるんだ? サミュー」
その時だった。ピューサの通信機が無機質な呼び出し音を響かせた。緊急時の通信手段にと、国王のラジェルが全ピュールヘルツへと持たせているものだ。
後ろではサミューと呼ばれた少年が何やら叫んでいたが、ピューサはそれにはお構いなしで鳴り続ける通信機を手に取った。
「……、はい。分かりました。ありがとうございます」
通信は数秒で終わる短いものだった。ピューサはサミューに向き直ると、
「もうすぐここに、援助が来るそうだ。良かったな、命拾いして」
無感情で無表情にそう言われたサミューは、言い返す言葉がありすぎて何も言えなくなるのだった。
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