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あっという間に冬になり、赤い葉が茶色になり、木がはどんどん姿を変えていった。
冬の木というのはどことなく寂しさを増強させるものだと思う。
同時に、青々茂る葉が落ち、色素の薄いこげ茶色の幹がそこに立っている様子は、プライドの高い孤高の王のようだとも。だけどそこに鳥がとまるような、そんな些細な変化だけで暖かく優しいものへと雰囲気を一遍させるような、そういう面も持ち合わせていた。
私よりもずっと年上の巨木の、また新しい顔だ。
一枚だけ残った葉を見つめると、ゆらゆらと力なく葉が揺れる。
「頑張れ」
心から意図せず出た言葉と共に、私は木に向かって笑って見せる。ふといつもの視線を感じ洋館を見上げてみると、彼は驚き顔で私を見ていた。
私が少年の表情を見た、初めての日だった。
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