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魔法は溶けた
帰りに玄関で蒲原係長の横を通った。
私は満面の笑みで「お疲れ様でした」と挨拶をし会社を後にした。
今夜はやけ酒。
とことん飲む。とことん食べる。
だって太らないんだから。
最高。
私は抱えきれないほど、酒とつまみを買った。
エコバッグに入りきらず、袋を初めてお願いした。
重くてアパートまで辿り着けるだろうか。
私、腕が細くて、かよわいから。
まだまだ家まで距離がある。
「荷物、持ちますよ」
すっと腕が軽くなった。
「……細島くん」
「痩せましたね?ちゃんと食べてます?いや、こりゃ食べ過ぎですって」
抱えた荷物を見ながら彼は笑った。
「晩ごはん、一緒にどう?お金ないんでしょ?」
私も笑う。
「じゃ、お言葉に甘えて。お酌します」
「男なら、しっかり飲め」
「こっわ」
「女って怖いのよ」
ふたり一緒に吹き出すように、笑った。
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