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面倒になったのだろう、姉は投げやりに言った。その言葉に、沈んでいたパパの表情がパッと明るくなった。
「そうか。そうだな。産まれたあとも、頻繁に泊まりにくればいい。遣史くんと二人きりでは何かと大変だろうからな。うん、それがいい」
「パパ、すごく孫に甘いおじいちゃんになりそう」
未来の甥っ子だか姪っ子だかに、パパが目尻を垂らしながら、何でも買い与えまくる様子がリアルに想像できて、笑ってしまった。
「いいのだ。孫は存分に甘やかさなければならない、という法律がある」
「また始まったぁ」
うんざりとのけ反ると、隣で姉も同じように背中を反っていた。
それは、パパの口癖だ。悪癖と言ってもいい。答えに窮したり、自分の思い通りに事を推し進めようとしたりする時に、勝手に都合のいい法律を作ってしまうのだ。物心ついた頃にはもう、何かのたびに口にするのを聞いていた。
「ははは。それに則って、パパは優愛の子供もめちゃくちゃに甘やかすぞ」
「わたしはまだまだ先のことだってば」
「そうやって言ってる子が、びっくりするくらい早くママになるのって、あるあるよね。わたしより早かったりして」
姉がニヤニヤと言ってきたので、わたしは口をとがらせた。
「あり得ません。彼氏だっていないのに」
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