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「………お前…いい加減にしろよ」
「そんなに怖い顔しないでよ~。センリさんみたいな美人が睨むと迫力スゴ過ぎるから~」
「だったら朝からこんなくだらない事してんな」
「だって…最近全っ然センリさんとキスできてないし…」
あからさまに落ち込んだトーンの声に、演技だと分かっていても胸がキュッとなる。
「全然って……一週間前にもしただろが」
「一週間も前だよ?しかもあの時は俺がセンリさんのおでこに “お休み” ってしただけだし!」
「だから…」
「俺は!センリさんからキスして欲しいの!」
普段カメラの前で見せる恰好つけた表情でもなく、プライベートで見せる大きな小動物みたいな表情でもなく、俺だけに見せる拗ねた様な甘えた様な表情…
くそっ!……俺がこの表情に弱いと知ってて…
タレントと担当のマネージャーという関係だったのに、いつからか俺達はセフレになった。
それが今や恋人同士だ。
勿論ちゃんと大希の事は好きだし、大希の好意も俺に伝わって来る。
セフレだった頃は聴く事ができなかった「好きだ」も「愛してる」も、今は惜しみなく告げてくれる。
嬉しいけど……恥ずかしい時もあるって分かれよ
「大希」
小さな子供がするみたいにへの字に曲げた唇を少し突き出して俯いていた男は、名前を呼ぶと窺う様に俺を見た。
「…目、閉じろよ」
「え?」
「キスするんだったら普通は目を閉じるだろ」
「…俺は開けたままでもイイけど?その方がセンリさんの顔、ギリギリまで見ていられるし」
「……閉じないならしない」
「えっ、ウソ!ヤだ!」
慌てて両目をギュッと閉じる姿は完全に子供だ。
「視線だけで妊娠する」とか「声を聞けば耳が蕩ける」と噂しているファンの子達には決して見せられたモノじゃない。
けれどそんな風に考えれば考えるほど、俺だけが知っている大希の素の表情だと思う毎に、つい…頬がニヤけてしまう。
「…んっ」
唇で唇に触れる。角度を変えてまた触れる。
触れては離れ、離れては触れを繰り返す。
「センリ…」
「ん、ヒロ……うわっ!」
背中に回された腕に抱え込まれる様にして、ベッドに押し倒された。
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